独学で社労士試験に合格するのは無理なのか?【合格基準点と受験率から考察】

社労士試験の難易度
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受験生Aさん

平成27年試験から難易度が上がったことは知っていますが、独学で合格することも難しくなったのでしょうか?

受験生Bさん

令和4年試験は、受験率が上がったにもかかわらず、合格率は5.3%に下がりました。これまでは受験率が上がると合格率も上がる傾向にありましたが、令和4年試験は、なぜ合格率が低下したのでしょうか?

社労士M

今回の記事では、このような疑問・質問に答えつつ、社労士試験を独学で合格するのは無理なのか否かについて考察していこうと思います。

今回の記事でわかること

  • 独学で社労士試験に合格することは可能か否か
  • 2015年(平成27年)以降の合格基準点の決まり方
  • 受験率と合格率の関係
  • 受験生のレベルが上がった理由
  • 独学をつづけるべきか否か

独学で社労士試験に合格するのは無理なのか?

結論からいいますと、社労士試験を独学で合格することは無理ではありません。

実際、ツイッター登録者の中には、独学で合格されたとつぶやいている方が複数います。

下のツイートの方は、インプット少なめのアウトプット多めの独学によって、一発合格されたそうです。

下のツイートの方は、ご自身が参加された「特別研修」(特定社会保険労務士試験の前に受講する研修)において、同じグループとなった方が、育休中に独学で一発合格されたとツイートされています。

下のツイートの方は、行政書士試験の合格者で、社労士試験にも独学で合格された優秀な方ですが、 合格までに6度の受験を経験されたようです。

下のツイートの方は、ご自身が独学で合格された経験から、独学で合格を目指している方(先ほど紹介したツイートの方)にエールを送っています。

このように、社労士試験に独学で合格することは、決して無理な話ではありません。

無理ではありませんが、この記事を書くにあたり、ツイッターに登録している独学合格者を検索したところ、上記の4名の方しか探すことができませんでした。それだけ独学による合格は難しいのです。

ただ、独学による合格者をなかなか探せなかったことをもって、安易に「独学での合格は難しい」と結論付けたら、この記事を読まれている方に「無責任」と批難されるでしょう。

ゆえに、ここからは、なぜ独学で合格するのは難しいのかについて、合格基準点や受験データを基にお伝えしていきます。

今回の記事を書いた私の紹介

私が今回の記事を書きました。

名前:社労士M
経歴:2011年(平成23年)の社会保険労務士試験に合格しました。
2013年(平成25年)に紛争解決手続代理業務試験に合格し、翌2014年(平成26年)には「特定社会保険労務士」を社会保険労務士名簿に付記しています。
ちなみに特定社会保険労務士とは、個別労働紛争における代理人として業務が認められた社労士のことです。
また、所属する都道府県社会保険労務士会では、判例に関する研究会や労使紛争に関する研究会に所属しており、研究テーマに関連する出版物の執筆にも参加しました。

社労士試験合格後は、現役の社労士に向けたセミナー講師なども務めてきましたので、社労士を目指す読者の方々へ有益な情報が提供できると自負しています。

独学による合格は可能か?【合格基準点からの考察】

社会保険労務士試験が、現在の試験制度(「選択式40問」と「択一式70問」による試験)となったのは、2000年(平成12年)の試験からです。

その時に示された合格基準点は、次のようなものでした。

  • 選択式合格基準点
    40点満点中28点以上、かつ、各科目3点以上
  • 択一式合格基準点
    70点満点中49点以上、かつ、各科目4点以上

上記の合格基準点とした理由について、厚生労働省は次のように説明しています。

国民に分かりやすい簡易なものとすることが望ましいことから、出題形式(選択式40問、択一式70問)、過去の合格基準の動向及び他の試験制度の現状を考慮した

ただし社労士試験は、毎年難易度が変動しますので、上記の合格基準点とは別に、次のような措置も講じられることとなりました。

各年度毎の試験問題に難易度の差が生じることから、試験水準を一定に保つため、各年度において、総得点及び各科目の平均点及び得点分布等の試験結果を総合的に勘案して補正を行うものとする。

「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」より引用

この規定に基づき、合格基準点の補正が現在に至るまで継続的におこわれているのです。

なお、ここでいう補正とは、受験生や予備校講師が「救済」呼ぶ措置のことです。

合格基準点の補正は、次のような場合の時におこなわれると「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」で示されています。

【総得点の補正】

  1. 選択式試験、択一式試験それぞれの総得点について、前年度の平均点との差を少数第1位まで算出し、それを四捨五入し換算した点数に応じて前年度の合格基準点を上げ下げする(例えば、差が△1.4点なら1点下げ、+1.6点なら2点上げる。)
    ※ 前年の平均点との差により合格基準点の上下を行うが、前年に下記3の補正があった場合は、3の補正が行われなかった直近の年度の平均点も考慮する。
  2. 上記1の補正により、合格基準点を上下させた際、四捨五入によって切り捨て又は繰り入れされた小数点第1位以下の端数については、平成13年度以降、累計し、±1点以上となった場合は、合格基準点に反映させる。ただし、これにより例年の合格率(平成12年度以後の平均合格率)との乖離が反映前よりも大きくなった場合は、この限りではない。
  3.  科目最低点の補正の各科目の最低点引き下げを2科目以上行ったことにより、例年の合格率と比べ高くなるとき(概ね10%を目安)は、試験の水準維持を考慮し合格基準点を1点足し上げる。

【科目最低点の補正】

各科目の合格基準点(選択式3点、択一式4点)以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する
ただし、次の場合は、試験の水準維持を考慮し、原則として引き下げを行わないこと
とする。

ⅰ) 引き下げ補正した合格基準点以上の受験者の占める割合が7割以上の場合
ⅱ) 引き下げ補正した合格基準点が、選択式で0点、択一式で2点以下となる場合

2014年(平成26年)までの合格率と合格基準点

現在の試験制度となった2000年から、2014年(平成26年)までの平均合格率は8.4%となっています(下の表をご参照ください)。

また2014年までの合格率は、2013年(平成25年)の5.4%を除き、7.0%~10.6%の間で推移していました。

ちなみに、2008年(平成20年)試験では、選択式試験において、3つの科目の合格基準点が補正されましたが、補正した理由は次のようなものでした。

【第40回(平成20年)社会保険労務士試験の合格基準について(一部抜粋)】

今年(平成20年)の選択式は難化が著しく、(合格基準点の)引き下げを行わなかった場合、選択式合格者は、14.4%(引き下げ後18.7%、昨年21.1%)となり、本来、基礎知識を問う選択式試験の趣旨にも反すること。

出典:平成27年社労士試験不合格取消等請求事件(労災・国年)TKTK

上記の「第40回社会保険労務士試験の合格基準について(一部抜粋)」をご覧頂くとわかるように、厚生労働省は選択式試験の趣旨を「基礎知識を問う」ものと位置づけをおり、試験内容が難しかった年度においては、当初に定めた補正の条件を満たさない科目であっても、例外的に合格基準点の引き下げをおこなってきました。

また、平成23年試験における選択式の科目合格基準点は、例外的な補正と追加補正により3科目の合格基準点が2点に引き下げられました。

【平成23年選択式科目補正の追加条件】
選択式及び択一式試験のそれぞれについて、基準点以上の受験者の占める割合が概ね5割(51%を目安)である科目が複数科目存在し、かつ、総得点では合格基準以上(選択式23点以上、択一式46点以上)でありながら、いずれかの科目について合格基準点(通常の科目補正の条件により補正したものを含む。)に達しないことにより不合格になる者の割合が相当程度になる場合(概ね70%を目安)には、試験の水準維持を考慮し、当該複数科目について原則として合格基準点の引き下げを行う。

出典:平成27年社労士試験不合格取消等請求事件(労災・国年)TKTK

要するに平成23年試験では受験者の得点状況が

  • 総得点では合格基準点以上でありながら、いずれかの科目について合格基準点に達しないことにより不合格になる者の割合が相当程度(概ね70%を目安)

となったことで

  • 選択式及び択一式試験のそれぞれについて、基準点以上の受験者の占める割合が概ね5割(51%を目安)である科目

となった選択式の労基・安衛(50.6%)と国年(51.2%)の合格基準点を2点に引き下げたのです。

また選択式の労災も、合格基準点以上の受験者の割合が35.1%でしたので「基準点(選択式3点、択一式4点)以上の受験者の占める割合が5割に満たない場合は、合格基準点を引き下げ補正する。」を根拠として、選択式1点未満の受験者に占める割合が3割(30%)を超えなくとも、例外的な補正により、合格基準点が2点に引き下げられました。

科目2点以下の割合1点以下の割合補正理由
労災64.9%27.4%基準点以上の割合が5割に満たない
労基・安衛49.4%24.4%基準点以上の受験者の占める割合が概ね5割(51%を目安)
国年48.8%18.7%基準点以上の受験者の占める割合が概ね5割(51%を目安)

原則の補正条件を満たさない上記3つ科目を補正したのは、試験水準を一定に保つため(合格率を7~8%程度に収めるため)と考えられます。

この補正の結果、平成23年試験の合格率は7.2%となりました。

2014年(平成26年)までの社労士試験は独学で十分に合格可能であった

ここまで述べてきたように、選択式試験では、試験水準を一定に保つことを目的として、例外的な補正と追加補正がおこなわれてきました。

これらの補正により、合格率は7%~10%台(平成25年試験を除く)で推移していましたから、どんなに難しい問題が出題されても、補正により救われる受験生が多かったのです。

例外的な補正や追加補正といった「試験水準を一定に保つ措置」が為されたことで、独学者でも試験水準を超える知識を身につければ、十分に合格できました。

私自身、平成23年試験を独学で合格しましたし、同期合格の仲間にも、独学者の数はそれなりにいたと記憶しています。

しかし2015年(平成27年)の試験から様相が一変します。

試験水準を一定に保つための措置が、原則としておこなわれなくなったのです(後述する令和3年試験は除く)。

なぜ例外的な補正や追加補正がおこなわれなくなったのかは、諸説ありますが、私は「第8次社労士法改正」の影響と考えています。

なお、これらの補正がおこなわれなくなった詳しい理由については、下の参考記事で解説しています。

2015年(平成27年)からの合格基準点と合格率

下の表は、2015年(平成27年)以降の社会保険労務士試験合格率です。

直近の2023年(令和5年)試験を含めた平均合格率は5.8%となっており、2014年までの平均合格率(8.4%)から2.6%も低下しています。

なぜ、これほどまでに合格率が低下したのかといえば「試験水準を一定に保つ」措置が原則として講じられなくなったことに尽きるでしょう。

下の表は平成27年試験の選択式得点分布割合です。「試験水準を一定に保つ」措置が講じられず、原則的な補正のみで合格基準点が決められていることが分かります。

全受験者に占める合格基準点以下の割合が5割(50%)を超えている労災と国年の2科目は、合格基準点を2点に引き下げたとしても、基準点未満(1点未満)の割合が3割(30%)を超えないため、例外的な補正はされませんでした。

平成23年試験でおこなわれた「試験水準を一定に保つ」ための措置が、平成27年試験でもおこなわれていれば、合格基準点以下の割合が5割を超えている労災と国年も補正されたはずです。

原則の条件にとらわれずに、例外的な補正や追加補正がおこなわれてきた平成26年試験までの選択式試験は「基礎知識を問う」ものでしたが、平成27年試験以降は、基礎知識「以上」の内容を問うものになったのです。

このように、合格基準点の決定に際し、試験水準を一定に保つ措置が講じられなくなったことで、出題される内容により、合格率が乱高下するリスクが高まりました

このリスクに最も巻き込まれるのは、法改正や判例などの学習がなかなか行き届かない、独学の方々であるのはいうまでもありません。

選択式試験で合格基準点を「1点」に補正された場合のケース

ここまで、選択式試験において試験水準を一定に保つ措置が講じられなくなったとお伝えしてきましたが、令和3年試験では、労働一般科目を例外的な補正により合格基準点を1点に補正し、国年も同様に2点へ補正されました。

なぜでしょうか?

額面通りに受け取ると、合格基準点を1点に補正する場合は、2015年(平成27年)以降封印している「例外的な補正」を他の科目も含めて適用するということです。

下の表は2021年(令和3年)の選択式試験「社会保険労務士試験科目得点状況表」です。補正した科目の基準点未満の割合は、労働一般が15.9%、国民年金が24.5%と本来補正される条件(30%以上)ではないことがわかります。

上記の2科目を追加補正した理由については、「社会保険労務士試験の合格基準の考え方について」に記載がないのでわかりません。

わかることは、労働一般科目を1点に補正したため、合格基準点以下の割合が5割を超えている他の科目についても、整合性を保つために例外的な補正したということです。

そして、労働一般科目を1点に補正するための補正は、平成23年試験のような「試験水準を一定に保つため」の措置でないことは明らかです。

また、令和5年試験では、選択式試験の雇用保険法での2点以下の割合は58.6%でしたが、基準点未満の割合が26.9%と30%以上ではなかったので、補正されませんでした。

このように、直近の試験でも「試験水準を一定に保つため」の追加補正がおこなわれていない以上、独学者は「合格率が乱高下するリスク」に晒されながら、今後も受験することになるのです。

独学による合格は可能か?【受験率からの考察】

ここからは、現在の試験制度になった2000年(平成12年)以降の「受験率」と「合格率」の関係を見ていきます。

受験率の上昇と合格率の関係

まずは下の表をご覧ください。

試験年度受験率()内は前年数値合格率()内は前年数値
平成19年77.2%(76.9%)10.6%(8.5%)
平成22年78.5%(78.2%)8.6%(7.6%)
平成26年77.9%(77.5%)9.3%(5.4%)
平成28年76.9%(77.4%)4.4%(2.6%)
平成29年77.5%(76.9%)6.8%(4.4%)
令和3年74.0%(70.8%)7.9%(6.4%)
令和4年77.8%(74.0%)5.3%(7.9%)
令和5年80.2%(77.8%)6.4%(5.3%)

この表は、現行の試験制度となった2000年(平成12年)以降において、前年比で「1%以上」合格率が上昇した年の「合格率」及び「受験率」を示したものです(令和4年の合格率は前年比で下落していますが、これから解説する際に必要な数値のため、表に掲載しました)。

令和3年試験までは合格率が「1%以上」上昇した年は、受験率もそれに比例して上昇していました(ただし、「試験水準を一定に保つ措置」がおこなれなくなった翌年の平成28年試験と、感染症対策による受験規制がほぼ撤廃された令和5年試験除きます)。

なぜ、受験率が上昇すると、合格率も上昇するのでしょうか。

受験率が上昇すると「初学者」「学習経験の浅い方」の受験率も当然上昇します。

そして「初学者」や「学習経験の浅い方」の得点分布は、基本的に各科目の合格基準点以下であることが多く、合格基準点を引き下げる効果があるのです。

合格基準点が引き下がれば、当然、合格率は前年よりも上昇します。

上記の根拠となるデータとしては、ユーキャン社労士講座の受講生合格率が挙げられます。

受講生の78%が初学者であるユーキャンは、教育訓練給付金制度利用者の合格率12.6%(平成30~令和2年の3年間)です。それに対して、経験者コースとの併用もできる資格の大原「社労士24」の合格率は48.9%となっています。

2つの講座の合格率を比較しますと、いかに初学者の合格率が低いかがわかります。

ちなみに下にリンクした記事には、学習経験の浅い方々(無勉強の層)が、合格基準点の決定に影響を及ぼす旨について詳述されています。少々辛辣な内容となっていますが、わかりやすい記事ですので、興味のある方はご覧ください。

このように令和3年試験までは、合格率が「1%以上」上昇した時には、受験率もそれに比例して上昇しました。しかし、直近の令和4年試験では、受験率が3.8%と大きく上昇したにもかかわらず、合格率が2.6%も低下したのです。

受験率の上昇に反して、合格率が低下した要因として考えられることは、受験生のレベルが上がったことでしょう

レベルの高い受験生が多く受験すれば、合格基準点も当然に上昇します。

ここからは、令和4年試験から受験生のレベルが上がった要因をいくつか考察してみます。

受験生のレベルが上がった理由

ここからは、受験生のレベルが上がった理由をいくつか挙げていきます。

【理由その1】 受験料の値上げ

令和3年試験より、受験料を9,000円から15,000円に値上げしました。

値上げした理由としては、人件費や会場費用など「試験実施コスト」の維持を目的にしたものと聞いています。

この大幅な値上げにより、学習経験の浅い方や初学者など「合格に自信の持てない方(俗にいう無勉強の層)」が受験を控えることとなりますので、合格基準点が引き下がる確率は、通例であれば低くなります。

「無勉強の層」の受験控えにより、選択式試験において、今まで補正されていたような「難易度の高い科目」も補正されにくくなります(補正されなかった例としては、令和4年試験の社会一般科目)。

択一式は、「無勉強の層」の受験率低下により総得点の平均点が高くなりますので、合格基準点が予備校等の予想よりも引き下がらなくなります。

受験料値上げ初年となる令和3年試験は、選択式の労働一般科目を「1点」にする例外的な補正があったので、合格率そのものは7.9%という高い数字でした。しかし択一式の平均点は前年比で+0.8点となっていますので、受験生のレベルが上がったことがわかります。

令和4年試験に至っては、受験生レベルの上昇が顕著で、選択式では、多くの予備校が予想していた社会一般科目の合格基準点の補正はなく、しかも総得点(選択式)の平均点は、前年比で+2.8点と大きく上昇しています。

択一式では、平均点こそ△1.4点と低下したものの、各予備校の「講評」では難易度の高さが指摘されていたにも関わらず、総得点の合格基準点はわずか1点(45点→44点)しか下がりませんでした。

このように、受験料の値上げによって、受験生レベルが上がったことがうかがえるのです。

【理由その2】 受験回数の多い受験生が増加した

平成27年試験から、試験水準を一定に保つための措置が原則としておこなわれなくなり、短期間での合格が難しくなりました。

平成26年試験以前であれば、短期間の学習でも十分に合格できていた社労士試験ですが、例外的な補正と追加補正がおこなわれなくなった平成27年試験以降は、科目別合格基準点(選択式)を満たせない受験生が目立つようになります。

下のツイートの方は、総合点では合格基準点を上回るほど優秀な方なのに、2年連続で科目別の合格基準点を満たせずに不合格となっています。

下のツイートの方は、行政書士として開業されるほど法学知識のある方ですが、社労士試験を5回受験するも、合格には至らなかったようです。

社労士試験を複数回受験をされて、合格することができない方は、ツイッターで検索すると多数いるのですが、ご紹介するのはここまでにして、ここからは、複数回の受験経験のある方が多いことについて、公表されている受験データを示してお伝えします。

まずは、試験水準が難化する直前の「平成26年試験(合格率9.3%)」の年齢別合格率をご覧ください。

年齢合格率
20歳代11.1%
30歳代35.8%
40歳代28.5%
50歳代17.9%
60歳代以上6.7%

次に「令和4年試験(合格率5.3%)」の年齢別合格率をご覧ください。

年齢合格率
20歳代10.7%
30歳代30.4%
40歳代31.7%
50歳代20.1%
60歳代以上7.1%

社労士試験の合格者が、何回目の受験で合格したのかは確かなデータがないのでわかりません。ネット上では平均3~4回という数字も散見されますが、それは根拠が不明なので、あまり信じない方がよいでしょう。

合格者の受験回数を推測する上で、参考にできるデータは「年齢別合格率」と思っています。

どの年齢で合格したのかは、受験回数を探る意味では有用です。

資格の学校TACが、社労士試験の合格者に「社労士を志した」理由を尋ねたところ

自ら勤務していた会社の労働条件に疑問を持って、「労働基準法」に興味を持ったのがきっかけ

と回答された方が最も多いようです。

労働者が、自らの労働条件に疑問を持つのは、転職を考えたり、責任ある職務に就く20歳代後半から30歳代前半であると推測できます。残業代が支給されない等の「名ばかり管理職」や、企業へ応募する際の「年齢制限」などの不合理な目に遭ったことがきっかけとなり、労働基準法に興味を持つのでしょう。

20歳代後半から試験勉強を始めると、早ければ1~2回の受験で合格できますし、遅くとも30歳代の前半には合格できます。

というよりかつての試験水準ならば、一発合格も決して無理ではなかったはずです。

そのため、平成26年試験では30歳代の合格率が35.8%となっており、年齢別合格者の中で、最も多い割合となっています。

しかし、試験水準が難化した平成27年試験以降、1~2回の受験で合格することが難しくなり、20歳代後半から30歳代前半で試験勉強を始めた方は、複数回の受験を余儀なくされています。

平成27年試験から8年が経過しましたが、その時に20歳代後半だった方は30歳代の半ば、30歳代前半だった方は40歳代の初めの年齢です。

令和4年試験では、40歳代の合格率が31.7%となり、複数回の受験を余儀なくされた方が、ようやく合格にたどり着いたことが推測できまます。

厚生労働省が試験毎に公表している「年齢別合格率」からは、受験回数の多い受験生が増加していることもうかがえるのです。

【理由その3】 YouTubeのサンプル動画などで学習上の不明な箇所を学ぶことができるようになった

私が初めて受験した平成20年(2008年)当時は、YouTube等いくつかの動画配信サイトはありましたが、社労士試験対策講義を内容とする動画などは、ほとんどアップされていませんでした(ただし、本試験の「解答解説」を内容とする動画は、わずかですがアップされていました)。

しかし令和5年の現在、YouTubeで「社労士試験」検索すると、多くの講義動画が表示されます。

それだけではなく、詳細な講義までアップされており、例えば令和4年改正項目である「在職時改定」と検索すれば、資格の大原「社労士24」のサンプル講義までが表示されます。

このように、初学者や独学者であっても、今は学習上の不明な箇所にも簡単にアクセスできますので、必然的に受験生のレベルは上がっていくのです。

【理由その4】低価格のオンライン講座(通信講座)が広く普及してきた

今から10年以上前は、社労士試験対策通信講座の数は少なく、受講料も決して安いとはいえないものでした。

しかし、現在の通信講座は低価格のものが多く、有名なところではサブスクリプション(月額制)で講座を提供している「山川靖樹の社労士予備校」や、講座のすべてがオンラインで完結する「スタディング」などは、昔では考えられないような安価で講座を提供しています。

低価格のオンライン講座が広く普及したことで、学習スタイルを独学から通信に変えた受験生も少なくないはずです。

当然、独学では学ぶことができなかった細かな論点も学べますから、受験生のレベルは向上します。

このまま独学をつづけるべきか

最後に、「このまま独学をつづけるべきか」と悩んでいる方に向けて、アドバイスします。

社労士試験の合格が「目標(ゴール)」ならば独学でつづけるべき

社労士試験に合格すること自体が「目標(ゴール)」という方ならば、このまま独学で学習をつづけるべきでしょう。

合格すること自体が目標の方とは、

  • お勤め先で、社労士資格を使って業務に携わることがない方(今後もその予定がない方)
  • 合格後に独立・開業する意思がまったくない方
  • ご自身の実力を試すためだけに社労士試験の勉強をされている方

などです。

特に、ご自身の実力を試すために社労士試験の勉強をされている方は、このまま独学をつづけるべきです。

多くの助け(資格スクールの助け等)を得てゴールした時よりも、独学のみで合格した時の方が「自己肯定感」を得ることができます。

さらにいえば、今後、社労士資格を必要としていない方が、合格のために費用を投じることは「無駄な投資」となりますので、費用対効果の視点からも独学で学習をつづけることを強くオススメします。

社労士試験の合格が「手段(通過点)」ならば今すぐ独学からスクールでの学習に切り替えるべき

社労士試験の合格が「手段(通過点)」という方ならば、今すぐに独学を止めてスクールでの学習に切り替えるべきです。

合格が手段の方とは

  • お勤め先で、社労士としてのスキルを活かし、社会保険&労働保険の手続き・給与計算・就業規則の作成(改定)などをおこなっている方(おこなう予定の方)
  • 独立・開業をする予定がある方
  • 異動や転職に際して、人事労務や年金業務に携わることを希望されている方

などです。

上記のような方には、社労士資格は必ず役に立ちます。また社労士会に入会(登録)することで、他の社労士との人脈形成や仕事上有益となる情報を共有することができますので、さらなる「手段」を手にできるでしょう。

前述したように、社労士試験は平成27年(2015年)以降難化していますし、受験生のレベルも上がっています。また、職域拡大を図る観点から、社労士法改正によって試験科目が増えることも予想されます(今後の試験制度の行方については、下の参考記事で詳しく解説しています)。

社労士試験の合格が「手段」の方は、現行の試験制度のうちに合格を目指すべきです。そのためには、スクールが提供する対策講座で、効率よく学習することをオススメします。

余談ですが、私と同じ現役の社労士の方が、試験範囲の広さを指摘した上で「コスパ」という視点からスクール(予備校)の利用を勧めています。

今まで独学で学習を進めてきた方の多くは

  • 学習時間の確保が難しい
  • スクールへの受講料の支払いが厳しい

などの理由によるものと思います。

そのような方には、スタディングの社会保険労務士講座がオススメです。

実際、経済的な理由でスタディングの社会保険労務士講座を検討されている方がいます。

また、スタディング社労士講座を利用して合格された方が「他のスクールの半額以内」という理由で、ツイッター登録者の方にオススメをしています。

独学で学習を始めた方も、なかなか理解できなかったことから、スタディングに無料登録したところ、わかりやすかったので本講座に申込されたようです。

下のYouTube動画は、スタディング社労士講座を受講して合格された方のインタビューです。独学で4年間学習してきたものの、合格には至らず、スタディングの受講を決めたようです。

スタディングの社会保険労務士講座については、以下の「参考記事」をご覧いただきますと、私が独学の方にオススメする理由がご理解頂けると思います。

独学でなかなか合格できない方、今後の試験制度の行方が気になる方は、スクールが提供するカリキュラムで効率よく学び、早期の合格を目指しましょう。

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